市民後見人とは
1.最高裁判所の考え方
成年後見関係事件の概況-平成25年1月~12月-(最高裁判所事務総局家庭局)に市民後見人の考え方が示されています。集計上の便宜的定義として、「市民後見人とは、弁護士、司法書士、社会福祉士、税理士、行政書士及び精神保健福祉士以外の自然人のうち、本人と親族関係(6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族)及び交友関係がなく、社会貢献のため、地方自治体等(※1)が行う後見人養成講座などにより成年後見制度に関する一定の知識や技術・態度を身に付けた上、他人の成年後見人等になることを希望している者を選任した場合をいう(※2、3)。」
※1 地方自治体の委嘱を受けた社会福祉協議会、NPO法人、大学等の団体を含む。
※2 市民後見人については平成23年から調査を開始しているが、同年及び平成24年の市民後見人の数値は、各家庭裁判所が「市民後見人」として報告した個数を集計したものである。
※3 当局実情調査における集計の便宜上の定義であり、市民後見人がこれに限られるとする趣旨ではない。
○裁判所では「地域で支える成年後見制度~市民後見を中心に~」(平成27年度)の資料の中で、市民後見人の活動のスタイル等を整理しています。
2.報告書、文献等にみられる「市民後見人」
○日本成年後見学会作成「市町村における権利擁護機能のあり方に関する研究会」平成18年度報告書
弁護士や司法書士などの資格はもたないものの社会貢献への意欲や倫理観が高い一般市民の中から、成年後見に関する一定の知識・態度を身に付けた良質の第三者後見人等の候補者
○「成年後見制度の現状の分析と課題の検討」 成年後見制度研究会報告書
市民後見人については、成年後見人等に就任すべき親族がおらず、本人に多額の財産がなく紛争性もない場合について、本人と同じ地域に居住する市民が、地域のネットワークを利用した地域密着型の事務を行うという発想で活用することが当面有効である。
○筑波大学 上山教授 「実践 成年後見2009.1」
市民後見人に委嘱する事案としては、難易度の低い事案、たとえば具体的には「日常的な金銭管理や安定的な身上監護が中心の事案、紛争性のない事案等、必ずしも専門性が要求されない事案」が一般的に想定されている。
○「専門職後見人と身上監護(第2版)」上山泰 2010 (株)民事法研究会
利用者の家族以外の第三者が、地域における公益活動として、無報酬もしくはごく低額の報酬によって成年後見人等に就任するケース
○岩間伸行「市民後見人」とは何か‐権利擁護と地域福祉の新たな担い手‐ 社会福祉研究第113号 2012.5月号
市民後見人とは、家庭裁判所から成年後見人等として選任された一般市民のことであり、専門組織による養成と活動支援を受けながら、市民としての特性を活かした後見活動を地域における第三者後見人の立場で展開する権利擁護の担い手のことである。
3.市民後見人の要件
市民後見人養成研修カリキュラム及び実施に係る報告
介護と連動する市民後見研究会 2012.3.26
市民後見人の要件
- 市民として、市町村における後見等の業務を適正に担う人材であること。(後見等を担う専門職等を含む)
- 後見人等としての必要な知識・技術・社会規範・倫理性を備えていること。
- 市町村等が開催する研修を修了し、所定の登録をしていること。
- 市町村の推薦により、家庭裁判所から後見人等の選任を受けることができること。
- 市町村による支援のもと、後見等の業務を行う人であること。
※老人福祉法第32条の2(後見等に係わる体制の整備等)における規定の具現化を一つの基準としている。
4.第二期成年後見制度利用促進基本計画~尊厳のある本人らしい生活の継続と地域社会への参加を図る権利擁護支援の推進~(令和4年3月25日閣議決定)からみる「市民後見人」について
「市民後見人とは、判断能力が不十分な本人のその人らしい暮らしを支えるなどの社会貢献のため、地方公共団体等が行う市民後見人養成研修などにより一定の知識や技術・態度を身に付けた専門職や親族5等ではない地域住民であって、家庭裁判所によって後見人等として選任されている人を指す。」
- 地方公共団体
- 地方公共団体の委嘱を受けた社会福祉協議会、NPO法人、大学等の団体を含む(成年後見関係事件の概況-令和2年1月~12月-(最高裁判所事務総局家庭局)のうち「親族以外の内訳」注6を参照した。)。
- 専門職
- 弁護士、司法書士、社会福祉士、税理士、行政書士及び精神保健福祉士等のこと(成年後見関係事件の概況-令和2年1月~12月-(最高裁判所事務総局家庭局)のうち「親族以外の内訳」の記載を参照した。)。
- 親族
- 6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族のこと(民法 725条参照)
5.NPO法人東三河後見センターの「市民後見人」
当法人等(専門職が実施する成年後見人養成講座修了者を含む)が実施した市民後見人養成研修(2011(平成23)年度、2012(平成24)年度、2013(平成25)年度、2016(平成28)年度、2020(令和2)年度に実施))、「新城市市民後見人養成事業の養成研修(2022(令和4)、2023(令和5)年度に実施)」を修了した方で、法人役員による面接に合格し、当法人が名古屋家庭裁判所豊橋支部に提出している、「市民後見人候補者名簿」登載者の方で、当法人が事務担当者として任命し、「市民後見人活動に関する合意書」を締結後、実際に後見業務を行っている方のことを『市民後見人』と呼んでいます。
2024(令和6)年3月末日現在22名の市民後見人の方が活躍されています。